仲 摩 邦 彦 建 築 設 計 事 務 所 
  Nakama  Kunihiko  Architects 

WORKS

H-House

住宅密集地に建つ二世帯住宅です。

住宅密集地の二世帯住宅

住宅密集地に建つ二世帯住宅です。 

課題

住宅が密集した中で良好な住環境を得るために、どのようにして「余白」となる部分を確保するかということが課題となりました。

ズラしながら積み重ねる

ただし各階で、その「余白」が必要とされる場所がそれぞれに異なっていました。

そうした必要に応えるためにも、3つの箱をズラしながら積み重ねることで、それぞれのレベルで必要な場所に必要な「余白」を確保していきました。

「余白」の用途

3つの箱がズレているために出来上がる「余白」は、ある部分では生活通路になり、ある部分では縁側になり、ある部分では室内に光を導き入れる役割をしています。

木の家の意味

積み重なった箱は、壁だけではなく底面に至るまで、木の板で覆われています。
外観を木にしたのには、いくつかの理由があるのですが、その一つは、この地域が昔から木にゆかりのある地域であったからです。
ほんの数十年前までは、木の板を張った家々が並んでいたといいます。
今となっては、近所では唯一と言ってもいい「木の家」ですが、時間的に少し引いて眺めてみると、どちらがこの地域での当たり前のあり方ということになるのでしょうか。
そういった意味では、少々オーバーな言い方になりますが、ミッシングリンクを埋める存在であるという風に考えています。

内と外のストーリー

積み重なった箱の底面にも、外壁と同じように木の板を張っています。
その板張りの底面はそのまま部屋の中へと入っていき、板張りの天井になります。
その板張りの天井から一段高くなった天井部分全体が、部屋を照らす照明にもなっています。
ちょうど木の箱の底を刳り貫いたら、明るい部分が出てきたといったような感じです。
そして同じように、室内の床はそのまま外部へと延長されて、木の箱のズレを利用した軒下のテラスになっています。
家の中と外は全く別ものというのではなく、ここでは、建築の内と外は互いに関連し合って、同じストーリーに貫かれています。

テラスと目隠し

室内の床は段差無しで屋外テラスの床へと連続しています。
テラスの先端、つまり隣の家との境界線のところには、床と同じ材料で目隠しの塀を設けています。
目隠しの塀は、太陽の光を遮らないように、それでいてお隣から丸見えにならないように、という微妙な高さにしています。

障子

目隠しの塀があってもまだ周囲の視線が気になる時には、普段は壁の中に収まっている障子を引っ張り出して目隠しをします。
障子は窓全体を隠すことも出来ますが、時には写真のように下の方だけを開けることも出来ます。
下の方はテラスの先の塀で目隠しが出来ています。
屋内から屋外のテラスへと続く空間の広がりを守りつつ、さらに、日差しを遮らずプライバシーも保つ。
どれ一つとして諦めないための工夫です。

階段

各階はすべて、少しずつズレながら積み重なっていて、そろっている場所はどこにもありません。
ただ1枚の壁だけは、そのようにズレながら積み重なった1階から3階までを、縦にまっすぐ貫いています。
そして、この木の幹のように上に向かってまっすぐに伸びる1枚の壁から、まるで枝が伸びるように階段の段板が突き出しています。
階段は宙に浮いているような感じで、階段の昇り降りは、ちょっとした木登り気分です。

トップライト

上に向かって伸びる壁のてっぺんにはトップライトを設置して、壁がそのまま空へと突き抜けていくような感じにしました。
トップライトからの光は、木の格子を通って、下へと柔らかく降り注ぎます。
ちょうど、
森の中の木漏れ日のような感じです。

ルーフテラス

1階2階3階がそれぞれズレて積み重なっていることを利用して、1階の屋根の上に、住宅密集地にあるとは思えないほどの広い屋外のテラスをつくりました。
屋外のテラスは、その先端で目隠しの格子によって大きく囲い、プライバシーを確保しています。
そして屋内のリビングルームはそのテラスに向かって大きく開くことで、実際の面積をはるかに超えた広がりが感じられるようにしました。

入れ子状の空間

各階は少しずつズレながら積み重なった「木の箱」のようになっているのですが、それぞれの箱の中にはもう一つ、小さな「木の箱」が入れ子状に入っています。
その中には、浴室やキッチン等の水廻りや収納等が収まっています。
写真の箱にはキッチンが入っています。
箱の周囲の壁はすべて収納になっていて、その周囲での生活を助けます。
必要な機能をすべて、箱の中に収めることで、その周囲に快適な「余白」を確保しました。
箱をズラしながら積み重ねることで、周囲の必要な場所に必要な「余白」を確保するという外観でのストーリーは、同じように、室内のストーリーにもなっています。

格子

住宅密集地にあって、遮りたいものを遮りながら、屋外とも連続した開放的な屋内空間を実現するために、部屋の廻りにテラスを設け、その周囲を木製の格子で囲いました。
光と風を通しながらプライバシーを確保し、屋内空間を屋外に向けて拡張しました。

入れ子状の空間

外観では、箱をズラしながら積み重ねることで、必要な「余白」を確保したように、ここでは格子で出来た箱の中に、屋内空間というもう一つの箱を入れ子状に置くことで、その間の「余白」を確保し、それによって周辺環境との調整をはかろうと考えました。

3階の個室

3階は、収納が収まった「箱」を中心にして、その周囲のぐるりと回遊できる「余白」部分が、必要な個室になっています。

宙に浮かんだ書斎

3階の外観正面に飛び出すようになっている部分を利用して、大量の本を収納します。
宙に浮かんだ書斎です。

寝室

書斎部分が飛び出したおかげで、その反対の東側の視界が最も開けた場所では逆に、周囲の家々から距離をとるように少し引っ込めることができました。
そのため、朝日の当たる眺めのいい寝室となりました。